不動産の「坪・㎡・間・尺」を本質から理解する|単位で差がつく基礎知識

 

不動産の購入を検討していると、必ずと言ってよいほど「坪」という単位に出会います。土地の広さ、建物の規模、価格の比較。どれを取っても「〇〇坪」という表現が前提になっている場面は多く、㎡だけで話が完結することはほとんどありません。

一方で、日本ではすでにメートル法が法律上の唯一の計量制度として採用されています。登記、契約書、建築確認、固定資産税評価――制度の基盤はすべて㎡です。それにもかかわらず、実務や説明の現場では、今なお坪が使われ続けています。

なぜ、法的には不要になったはずの単位が、実務から消えなかったのか。その理由を順に追っていきます。

なぜ「坪」は消えなかったのか

まず事実を整理します。

日本では、1951年に計量法が制定され、尺貫法は原則として廃止されました。その後、不動産登記や建築基準法、税制においても、面積の公式表記は㎡に統一されています。

それでも現場では、次のような状況が続いています。

  • 広告や販売資料では坪と㎡が併記される
  • 価格比較は坪単価が基準になる
  • 営業説明では坪を使った方が話が早いとされる

ここで重要なのは「使われ続けている」という事実です。

単位は、便利でなければ淘汰されます。制度から排除され、教育でも教えられなくなった単位が70年以上残り続けているという事実は、それ自体が検討に値します。

この現象は、「慣れているから」「日本人だから」といった説明では不十分です。なぜなら、慣れは世代交代とともに失われるからです。それでも坪は消えていません。

理由を探るためには、坪という単位を構成している下位の単位――尺と間――から見ていく必要があります。

尺・間・坪という体系は、どのように成立したのか

1尺という長さの半端さ

現在、不動産や建築の実務で使われる換算は次のとおりです。

  • 1尺 ≒ 30.303…cm
  • 1間 = 6尺 ≒ 1.81818…m

ここで注目すべきなのは、1尺=30cmではないという点です。30.303…cmという数値は、10進法のメートルと相性が悪く、計算上は扱いにくい。

にもかかわらず、この値は切り捨てられず、現在もほぼそのまま使われています。これは尺が後から決められた単位ではなく、先に存在した身体寸法を基準に、あとから数値化された単位だからです。

尺は、歩幅、腕の長さ、作業動線といった人間の身体スケールに近い長さとして成立しました。そのため、メートル法に合わせて再定義する合理性が乏しかったのです。

1間=6尺という構造

次に「間」です。1間は6尺で構成されています。

6という数は、10進法では扱いにくいですが、分割には非常に優れています。

  • 1/2 にできる
  • 1/3 にできる
  • 1/6 にもできる

建築において、柱間を半分にする、三等分する、垂木を割り付けるといった操作は頻繁に行われます。6尺という構成は、こうした作業に対して極めて合理的でした。

坪=1間×1間でなければならなかった理由

1坪は、1間×1間の正方形です。

数値で表すと、

  • 1.81818…m × 1.81818…m
  • 約3.305785㎡

という、非常に中途半端な面積になります。

しかし、この「半端さ」こそが重要です。坪は、㎡に換算するために作られた単位ではありません。空間を構成する最小単位として、間を正方形にした結果として生まれた単位です。

なぜメートル法に完全統一されなかったのか

まず、誤解がないように確認しておきます。面積の公式な表記は㎡です。登記や契約、行政手続きの世界では㎡が前提であり、これは動きません。

問題は「制度が㎡なのに、なぜ現場で坪が消えないのか」という点です。

同じ意味でも「単位」が違うと理解のしやすさが変わる

たとえば距離で考えてみます。

  • 5,000m
  • 5km

この2つは、数字としてはまったく同じ距離です。それでも多くの人は、次のように感じやすいはずです。

  • 「5km」→ ランニングや徒歩移動として、だいたいの体感が出る
  • 「5,000m」→ 正しいと分かっても、頭の中で「kmに直す」作業が起きる

ここで言いたいのは、どちらが正しいかではありません。

同じ対象でも、単位が変わると、理解に必要な“頭の中の作業量”が変わる、という事実です。

㎡は「正しい」が、生活判断に直結するには一段階の変換が必要になりやすい

この構造は、面積でも起こります。

たとえば「85㎡の住宅」と聞いたとき、次のことを即座に言える人は多くありません。

  • LDKは何畳くらいになりそうか
  • 廊下・収納・洗面・階段を差し引いた“居室に使える面積”はどれくらいか
  • 結果として部屋数をどう割り振れるか(3LDKか、2LDKか等)

85㎡という数字は正確です。

しかし「正確であること」と「暮らし方の判断に直結すること」は同義ではありません。暮らし方の判断に落とすには、たとえば次のような“変換”が頭の中で必要になります。

  • ㎡ →(ざっくり)坪に直す/あるいは「畳換算」「間取り換算」をする
  • 総面積 →(現実的に)廊下・水回り・収納を差し引いて「居室に回せる量」を想像する
  • 居室に回せる量 → 部屋数と広さの配分を想像する

この変換がスムーズな人もいます。

ただ、一般消費者の多くは、日常で「㎡→暮らし」の変換を繰り返す機会が多くありません。そのため、㎡だけで聞くと「正しいが、判断に落ちにくい」と感じやすいのです。

坪は「空間を組み立てる単位」として残り、㎡は「制度で扱う単位」として固定された

ここでようやく結論を言語化します。

坪が消えなかった最大の理由は、坪が「記録する単位」ではなく、もともと空間を組み立てる単位として運用されてきたからです。

坪は、次の構造で成立しています。

  • 1尺 ≒ 30.303…cm
  • 1間=6尺 ≒ 1.81818…m
  • 1坪=1間×1間 ≒ 3.305785㎡

注目すべきなのは、1坪が「3.3㎡」のようなキリの良い値ではなく、3.305785…㎡という半端な値になる点です。

もし坪が「㎡に合わせて作られた単位」なら、ここまで半端にはなりません。つまり坪は、㎡へ変換するために設計された単位ではなく、間(=柱間の基準)を正方形にした結果として生まれた単位です。

だからこそ、住宅の説明・比較の場面では、坪が次の用途で生き残ります。

  • 「この家の規模感」を一言でつかむ(延床〇坪)
  • 価格を比較する(坪単価〇万円)
  • 土地と建物を“空間の塊”として扱う(感覚的な粒度が合う)

一方で㎡は、制度・記録・計算に強い単位です。登記簿面積、契約書、評価額の根拠資料など、「公式に残す」場面では㎡で統一する方が合理的です。

結局、日本の不動産取引は、単位の性格の違いをそのまま反映して、次の役割分担に落ち着きました。

  • ㎡:制度・契約・記録の単位
  • 坪:説明・比較・判断の単位

これは「どちらが正しいか」の話ではありません。同じ対象(不動産)でも、目的(記録か、判断か)が違えば、使いやすい単位が違うというだけです。

距離で「5,000m」と「5km」を使い分けるのと同じ構造です。

畝・反・町歩とメートル法の一致は偶然か

住宅だけでなく、農地を対象とした尺貫法の面積単位も見てみます。

単位 坪換算 メートル法換算
1畝 30坪 約100㎡(1a)
1反 300坪 約1,000㎡
1町歩 3,000坪 約10,000㎡(1ha)

注目すべきは、近似ではなくほぼ一致している点です。

  • 1畝 ≒ 1a
  • 1町歩 ≒ 1ha

これは偶然ではありません。人間が一人、あるいは一家族で管理・耕作できる土地の規模には物理的な上限があります。その上限は文化が違っても大きく変わらない。

尺貫法とメートル法は異なる体系から出発しながら、人間の管理能力という制約条件によって、ほぼ同じ規模に収束したのです。

坪という単位とどう向き合うべきか

坪は便利だから残ったのか。それとも、単なる慣習なのか。

ここまで見てきた事実を整理すると、次の条件が揃っています。

  • 数値が非合理でも残り続けた
  • 制度から排除されても実務で使われた
  • 他の単位で完全に代替できなかった

これは、「便利」という言葉では説明しきれません。

文明とは人が空間や価値をどう区切るかについての長期的な合意の集合体です。その意味で、坪は単なる面積単位ではなく、生活空間をどう捉えるかという合意の結晶だと位置づけることができます。

つまり、坪を信仰する必要はなく、㎡を軽視する必要もありません。重要なのは、単位が何を表すために生まれたかを知った上で使うことです。

 ■坪は「判断」のための単位
 ■㎡は「制度」のための単位

この違いを理解していれば、説明に振り回されることは減ります。単位を理解するとは、計算ができるようになることではありません。判断の主導権を手放さないための準備です。