あなたもできる!新規地代の概算額を査定する方法をご紹介します

ある個人の方より「所有する土地の地代について知りたい」というお問い合わせがありました。

内容としては、かつて賃貸住宅として利用されていた土地を更地にした際、「ある法人から事業用地として借りたいが、その法人から提示された地代が適正か確認したい」とのお問い合わせです。

近くの不動産業者にも確認したものの、適切なアドバイスが得られなかったことから、当方に問い合わせが届いた次第です。

新規地代の概算額を簡易査定する2つの方法

新規に地代を設定する際の査定方法として、2つの手法をご紹介します。

1. 積算法による査定

積算法は、不動産鑑定の評価手法の一つで、「①資産価値 × ②利回り + ③公租公課」に基づく計算式です。

この計算式は年間の地代を求めるもので、月額の地代を算出する場合は、これを12で割ります。

①資産価値:
予定される賃貸借契約内容によっては調整が必要な場合もありますが(例.地上建物の用途が限定されている場合など)、まずは対象となる土地の「更地価格」を目安とします。

なお、更地価格について、相続税路線価を目安にしても構わないとは思いますが、一部の地域では同路線価が実勢価格水準とかけ離れている場合があります。

これは路線価が「税の公平」の観点から、実勢価格水準よりも税負担の均衡を重視した結果の「歪み」です。

できるならば、近くの不動産業者もしくは弊所にお問い合わせされた方がよろしいかと思います。

村本不動産鑑定士事務所の公式サイトをチェックする

②利回り:
物件用途に応じて異なります。データ数が400以上ある近畿圏の借地データをもとにした目安は以下のとおりです。

  • 戸建住宅用:約2%
  • マンション用:1.5~2%
  • 店舗・事務所用:3~4%
  • 一般定期借地(50年以上):2%
  • 事業用定期借地(10年以上50年未満):3~4%

③公租公課:
納税通知書記載の固定資産税額を使用しますが、納税通知書が見当たらないとか、納税義務がある「貸す側」でなく、「借りる側」なので税額がわからない場合は「全国地価マップ」などで固定資産税路線価を確認可能です。

一般財団法人 資産評価システム研究センター「全国地価マップ」
https://www.chikamap.jp/chikamap/Portal?mid=216

この方法では土地の利回りに基づき査定を行いますが、実際の借地契約内容によっても調整が必要です。特に近畿圏外での利用や資産価値の変動がある場合、利回りはケースに応じて調整されることがあります。

2. 公租公課倍率法による査定

公租公課倍率法は、「③公租公課 × ④倍率」によって地代を求める方法です。

前記の積算法とは異なり、不動産鑑定評価基準に基づく手法ではないものの、地代と公租公課に強い相関があるとの考え方に基づいています。

③公租公課:
先述のとおり、固定資産税額が基準となります。

④倍率:
先述の②利回りと同じように、借地の用途によって異なるもので、近畿圏での目安は以下のとおりです。

  • 戸建住宅用:5~10倍
  • マンション用:5~10倍
  • 店舗・事務所用:5倍
  • 一般定期借地(50年以上):8~15倍
  • 事業用定期借地(10年以上50年未満):4~5倍

こちらも前記の積算法同様、実際の利用状況により倍率が変動する可能性があるため、確認が必要です。

お問い合わせ内容に対する査定結果

今回お問い合わせのあった事業用定期借地の地代について、当方で簡易査定した結果、法人側から提示された地代よりも3割上位でした。

つまり、当方に相談されずに法人側が提示してきた地代のままで土地の賃貸借契約を締結していたら、3割分の損をしていたかもしれません。

地代概算額の査定方法にあたっての注意点

今回ご紹介した地代概算額の査定方法に際して、以下の3点に留意する必要があります。

①簡易査定方法の限界:
今回ご紹介した地代概算額の査定方法は、2つともあくまで簡易なものであり、査定項目の「利回り」「倍率」は近畿圏のデータを基にしていますから、それ以外の地域だと当てはまらない可能性があるので、専門的な不動産鑑定評価基準に基づく鑑定結果とは異なる可能性があります。

②査定結果の乖離:
「積算法」と「公租公課倍率法」の結果が大きく異なる場合、どちらか、または両方の方法に誤りがある可能性も考えられます。両方の査定を併用することで判断材料としてください。

③継続地代には別途査定が必要:
今回ご紹介した方法は「新規」に借地契約を締結する際の地代概算額の査定方法であり、既存の契約を見直す「継続地代」の査定方法は異なります。

継続地代については別途コラムで解説します。

次のステップ

適正な地代を見極めるためには、まず簡易査定で得られた金額をもとに相手方と交渉を行い、その後正式な鑑定評価も視野に入れると良いでしょう。

また、固定資産税や路線価などを考慮して、各方法による査定結果の検証の意味から、複数の視点から再度確認することも大事です。

地代水準の把握に際して、専門家の意見を確認したいのでしたら、賃料評価に強い村本不動産鑑定士事務所にご連絡・ご相談ください。

\確かな地代評価をお求めでしたら!/
村本不動産鑑定士事務所の公式サイトをチェックする