前回の記事では、土地を新たに賃貸する際の「新規地代」の簡易査定方法について解説しました。
今回の記事では、既存の土地賃貸借契約で現在の地代を「見直す」ための方法、『継続地代』の簡易査定の仕方についてご紹介します。
基礎となる鑑定評価手法
継続地代の査定に用いられる評価手法には「差額配分法」という方法があります。これは、既存の地代と現在の資産価値の差額を考慮することで、適正な地代水準を求める手法です。
他にも以下の手法が使われますが、差額配分法は特に現在の地代と対象の土地の特性を反映しやすい手法とされています。
- 利回り法:土地の収益性に基づいた評価
- スライド法:市場動向に応じた評価
- 賃貸事例比較法:類似継続地代事例との比較
差額配分法の査定式
差額配分法では以下のような式を用います。
(①対象不動産の資産価値に応じた地代相当額-②実際地代)×③差額配分割合+②実際地代
それぞれの項目について説明します。
まず、①の地代相当額は、前回記事による「新規地代」相当額です。
②の実際地代は、文字どおり、現在授受している地代です。
そして、①と②との間に発生している差額の一定割合(③)を、②の実際地代に加えます。
具体的な査定例
上記の文字だけの査定式ではわかりづらいので、具体的な査定内容を例示します。
- 地代相当額(①):この金額は、前回記事で紹介した「新規地代」に相当します。今回は月額100万円と仮定します。
- 実際地代(②):現状契約されている地代で、今回のケースでは月額60万円です。この地代水準は20年前に設定されたとします。
- 差額配分割合(③):差額をどの程度加算するかを決める割合で、今回は双方の妥協として50%と仮定します。なぜ50%とするかは後述します
この式に基づき、現在締結している土地賃貸借における地代(今回例では月額60万円)を「見直す」場合の新しい地代水準を求めると次のようになります。
(100万円-60万円)× 50% + 60万円 = 80万円
このように、現行地代を基準にして一定の割合で増減額することで、双方にとって納得のいく水準に近づけます。
なぜ現行地代に差額を配分するのか?
継続地代は、現行の賃貸借契約に基づくため、契約時に双方が合意した地代水準が出発点となります。
契約時点の合意を無視して一方的に新しい水準に引き上げると「契約自由」の原則に反することになり、不公平感が生じる可能性があります。
つまり、現行地代はお互いに納得して決めたのだから(先ほどの例では20年前にお互い納得してるはず)、この額をスタートラインにしないと、当事者の一方に不公平感が生まれることになります。
このため、現行の地代に差額の一部を加算する形で(減算する場合もアリ)、実際の市場価値に近づけつつ双方の納得を得られるよう調整するわけです。
また、現行地代を決めた時点から相当の時間が経過している場合(先ほどの例だと20年)、その間に市場動向も地代決定要因も変わっており、現行地代を決めた時点での価値は現在とズレが生じてます。
そのズレが、配分することになる「差額」というわけです。
ただ、その差額をそのまま現行の地代に加算するとは限りません。
というのも、例えば先ほどの例の場合だと、借主だけでなく地主(貸主)も契約を見直さずに20年も放置していた「貸主」にも一定の責任が認められるからです。
かといって、月額60万円のままというのも「貸主」に不利です。
そこで当事者お互いに「痛み分け」という判断から50%としたわけです。
結論と次のステップ
以上のように、継続賃料の鑑定評価手法である「差額配分法」の考え方を適用することで、これまでの現行地代を見直す地代水準について、簡易的に査定することができます。
ただ、実際の地代見直しには、双方の協議や現行市場の状況も重要です。特に賃料評価に詳しい専門家のアドバイスを得ることで、より適切な見直しが可能となります。
なお、一部ではありますが、賃料評価についての誤解が原因で、誤った地代評価の鑑定評価書が提出されるケースも見受けられます。
弊所では、このような地代や家賃の評価を得意としており、正確な賃料評価を提供していますので、正しい地代評価をお求めの際はぜひご相談ください。
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